【写真】パラッツォ・パリジオ(Palazzo Parisio & Gardens)/マルタ共和国
Q.富裕層が投資する、資産運用先を教えてください。
A.株式、債券、不動産、金のほかに、ワイン、美術品、アンティーク家具などがあります。
お金持ちセレブの資産運用投資先
一般に「投資・資産運用」というと、株式や債券のような誰にでもスムーズに取引でき、換金したいときにしやすいという流動性が高いものや、即座に現金に交換するのは難しいけれど、手堅く不労所得を産んでくれる不動産が有名です。
一方、株や不動産よりも価格が安定しており、高級アクセサリーやスマートフォンの部品に欠かせない材料、さらに現金の価値を裏で支える金は、産出量に限りがあり人工的に生み出すことができないため超富裕層を中心に人気が高い資産であり、次いで人工的に生み出せるものの価値が高いダイヤモンド、スリランカやタイ、ミャンマーで産出されるサファイアやルビーも宝石の中ではまずまずの需要があります。
また近年では、発行枚数が限られた仮想通貨(暗号資産)と呼ばれる電子マネーに、資産の一部を投資運用するセレブも現れてきています。
しかし、富裕層の中でもピラミッドの頂点に座るような本物の大富豪は、上記のような資産に加えて、ワインや美術品、クラシックカー、アンティーク家具などに資金を振り分けているようです。
そんな中、毎年ウェルスレポートを出していることで有名な英国(イギリス)の大手不動産コンサルタント会社・ナイトフランクが興味深いレポートを発表しています。それが「高級品・贅沢品への投資指数表」(Knight Frank Luxury Investment Index/ KFLII)で、このレポートは収集品である超高級ラグジュアリー製品10種類の10年間にわたる価格変動が記されています。そして当レポートでは、超富裕層が好んで投資する高級品には、リーマンショックなどの影響を全く受けずに軒並み大きな値上げを記録し続けている現状が浮かび上がってくるのです。
The Knight Frank Luxury Investment Index
●ナイトフランク「高級品への投資指数」(2005年1月~2014年10月)
収集品(Collectable) | 1年 | 5年 | 10年 |
---|---|---|---|
家具(Furniture) | -9% | -25% | -28% |
時計(Watches) | 4% | 49% | 68% |
陶磁器(Chinese ceramics) | 9% | 46% | 69% |
宝石(Jewellery) | 2% | 35% | 168% |
切手(Stamps) | 3% | 34% | 195% |
コイン(Coin) | 13% | 92% | 232% |
ワイン(Wine) | 7% | 38% | 234% |
アート(Art) | 15% | 61% | 252% |
車(Cars) | 16% | 140% | 487% |
高級品全体の平均 | 10% | 62% | 205% |
これらの高級品は、誰もが欲しがるような需要が高い商品なのに供給数が限定されることで、年々価格が上昇しやすい特性を備えている点が特徴ですが、とくに上記の中で近年大きく注目されているのが、国際オークションで落札額の最高記録が更新され続けている「アート」(美術品)と、2015年に世界中のオークションにかけられた25台のうち8台が10億円以上で取引された「車」(クラシックカー)です。
最近では、「アート」の分野では2015年にピカソの「アルジェの女たち」が史上最高額215億円で落札されたり、「車」では2003年時点で119万ドル(約1億2,000万円)だったフェラーリ「250GTベルリネッタLWB」が2012年に671万ドル(約6億7,000万円)で売却、同じくフェラーリの「250テスタロッサ」がわずか2年で4億円以上のリターンを生み出すなど、大きな注目を集めています。
しかし一方で、高級品と呼ばれる物が、マニアを呼ぶほどの限られた流動性によって価格を押し上げるものの、株や不動産のようにすぐに売り手が見つからないという特性も備えています。また、専門家の目利きでも価値の判断が難しい側面があり、かなり難易度が高い投資先と言えるかもしれません。
それでも、大富豪たちが時計、宝石、ワイン、アンティークコインなど価値ある物に投資し続けるのは、資産を物質に置き換えて課税金額を抑制したり、世界の国々の政情がいつ変化しても影響を受けにくい利点を活かした長期戦略の一環であり、そんな富裕層セレブの習慣を皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか?
(参考文献:ACT4 vol.69/IMPRESARIO,2016)